表象の美学/マルセル・デゥシャン ミッシェル・サヌイエ編
¥3,000 税込
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1997年10月 第1刷
ビニールカバー付き箱あり 中身若干の日焼けあり
マルセル・デゥシャン御大の作品「大ガラス」の作品に関連した文書録なのですが、何ぶん難解を極め、読書というよりは解読に近い体験をしました。何かを分かりたくて、4〜5回ぐらいは読み返しましたが結局一つの謎でしかありません。その謎は単なるわけのわからないものという意味ではなくて、定義を許さない表現の神秘のように感じます。
お前も何を言ってるんだよ、と思われそうなのですが、本書を読んでいて走馬灯のようにちらついた所感を書いておこうと思います。
デゥシャンは車の透視図面のように、2次元において3次元が表現出来るのであれば、3次元の透視図面を作れば異なる次元が表現できるはずだと画策しているように思えました。では、3次元の透視図面をどのように描ききるかが問題なのですが、その手法が大ガラスというレディメイドなのではないでしょうか。
レディメイドは、表象である事物に内在する意味を浮き彫りにする装置で、便器に泉と名前を付けたあの作品のように、本来の対象が持つ意味を失わせ、その裏側に内在している意味を、時にはキメラのような不条理な配置で、意味を浮き彫りにさせて受け手の無意識に訴えかけます。レディメイドは3次元で表現されていますが、そのメッセージは無意識という現実とは一段違うのレイヤーで行われている表現のような気がしています。
大ガラスは他のレディメイドよりも、その構造は難解を極め本書は解説書のように描かれています。この難解さの由縁なのですが、レディメイドに与えられた意味はとどのつまり、デゥシャン自身の主観そのものであり、それを激しく展開させていくので、読んでいてついていくのは大変です。
ただ、私が本書に感じるのは内容の意味への理解ではなく、あくまでも3次元のレディメイドが、違う次元を表現しようとしているという構造美にあると思います。
デゥシャンは本書で自分を信じることの大切さを強く語っています。自分の感覚を信じなければレディメイドは成立しません。デゥシャンが体現しているのは、自分を信じる大切さであり、その信念で未知の領域を表現するという、とてもシンプルな姿勢なんだと私は思います。
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